残念な人の仕事の習慣
トップ1%の運転手が実践するサービス業の真髄
私はと言えば、過去10年以上タクシーに乗るときは、できるだけ個人タクシーを使うようにしている。仲間にもそういう人が多い。
昼間は急いでいることが多いし、道が複雑なところに行ったりしない。そもそも昼間は個人タクシー自体が少ないこともあるので、企業タクシーにも乗る。しかし、終電を逃したときは、99パーセント個人タクシーを使う。
個人タクシーに乗るのは理由がある。
最近はほとんどの個人タクシーがトヨタ・クラウンや日産・フーガなどの高級車を使っている。中には、レクサスのLS460なども時々見かける。車がいいというのも一つの理由だが、最大の理由は、道をよく知っているからだ。
個人タクシーがよく道を知っているのは、一定期間以上は企業タクシーで仕事をしていないと資格を取れないので、まず経験があるからである。
私が家に帰るとき、たとえば自分の会社からだと、行き先を伝えて、あとはキーとなる交差点を2、3伝えれば、それで完了。
行き先を告げた後は、よほど疲れていない限りは、運転手さんと世間話をする。たいていの人は、退屈なのか話に付き合ってくれる。といっても、私はほとんど話さず、適当に彼らから話を聞き出しているだけなのだが、長年タクシーの運転手をし、高級車で採算が取れる営業成績を続けている方々は、話も面白い。中途半端な取り組み姿勢で仕事をしてないのである。
先週も面白い話を聞いた。
60歳はとうに過ぎているであろう年配の運転手だったが、例によって、「きれいな車ですねぇ」などと話を切り出したら、「なぜきれいにしているか」「どうやっているか」などを話し出した。
そこで、「安全運転だし(三ツ星が付いていた。三ツ星は優良事業者認定制度のマスターに認定されたことを表す)、また乗りたいという固定のお客さんも多いんじゃないですか」と言ったら、運転手は「最近はそうでもないけど、バブルの頃は結構いましたね。20?30人くらいはいたかな。今はその3分の1くらいですかね」と答えた。
興味が湧いてきたので、もっと突っ込んで話を聞いてみる。
「どんなきっかけで指名してもらえるんですか」
「いろんなパターンがあるけど、やっぱり2回目に家の前まで連れて行ったときだね。今はカーナビとかあるけど、昔はそんなのはなかったから、お客さんを家まで送った後、日付、お客さんの特徴と一緒に帰り道をノートに書いておくんですよ。それでね、見たことのあるお客さんが乗るとそれを思い出して、家の前まで連れて行くんですよ。だいたいのお客さんは酔っ払って寝ているから、家の前に着いて起こすとビックリする。そうしたら、無線番号か自動車電話の番号を聞いてくるから。そこからはもうずっと頼んでくれますよ」
運転手の話はまだまだ続く。
「そうしていると、今度はお客さんが増え過ぎてしまったんですよ。1人では対応できなくなってきたので、仲間とお客さんを共有するようにしたんです。同じ情報を共有して、誰のタクシーに乗っても、同じようなサービスでやる。もともとは自分のお客さんだから、自分が乗せたいんだけど、みんなでやるほうが、結局お客さんも喜んでくれるんです」
この話は、あらゆる仕事に通じると思う。タクシー業界のような過当競争の中では、100人いたら100人成功するとは限らない。むしろ1パーセントもいないであろう勝ち組の人の話を聞けたのは、それだけ有益な時間だった。
最近の話では、暑い夏の日、氷で冷やしたおしぼりを出してくれるタクシーに出会った。こういったちょっとしたサービスが心憎い。成功している人には、成功しているだけの理由があるのだ。
先述のような勝ち組の運転手には、すでに固定客が付いているのだろう。
逆に言えば、街中で流しているタクシーには残念な運転手が多いということなのではないだろうか。
もちろん、優秀な運転手も状況により流していることもあるが、手を挙げて停めたタクシーに残念な運転手が少なくないのには、それだけの理由があるのだろう。
- 『残念な人の仕事の習慣』(アスコム刊)より抜粋
- トップ1%の運転手が実践するサービス業の真髄
- MKタクシー社員の「やる気のスイッチ」とは
- 件名につけた【緊急】。あなたにとって?相手にとって?
- ビジネスホテルに「大浴場」がある本当のワケ
- ショップ店員の残念なコミュニケーション
- 「残念なメール」はやたらと長い
ビジネスコンサルタント。東京大学経済学部卒業。1994年にアクセンチュア入社後、2003年に独立。
事業再生コンサルティングの味あるパートナーズ、家事を宅配する生活総合支援サービスのカジタク、5円コピーのAPソリューションズ、プロフェッショナル研修の知識工房等、複数の事業に株主、経営者、実務担当者の3つの立場から運営に携わる。主な著書・共著に『残念な人の思考法』(日本経済新聞出版社)、『残念な人の英語勉強法』(幻冬舎)、『ロジカル・シンキングの道具箱』『会議の教科書』『時間とムダの科学』などがある。
残念な人の仕事の習慣 山崎将志 著
努力してる、でも成果が出ない。で、ちょっとイヤになってきた…そんなときの仕事の処方箋。仕事の現場でついついやってしまう残念な習慣を数多くの事例を交えて紹介し、その解決法をエンジニアリングに、具体的に解説していきます。
話し方やメールの仕方といった日常の人間関係から、時間の使い方、マネジメント、そして生き方にいたるまで具体事例を交えながら詳細に解説していきます。
















