<船村徹さん死去>評伝 「歌は言葉 栃木弁で作曲」

(毎日新聞) 2月18日(土) 00:09:04

 日本人の心に響く、哀愁あふれる「船村メロディー」は永遠に−−。戦後の歌謡界に多くのヒット曲を送り出した作曲家、船村徹さんが16日、84年の生涯を閉じた。

             ◇

 「歌は言葉なんだ。そして、ちゃんと言葉を話せる人でなければ日本の歌は歌えない」。船村さんは、ウイスキーの水割りをなめ葉巻をくゆらしながら、常々こう語っていた。

 「コンビを組んだ高野公男が亡くなる前にこう言った。『おれは、自分のお国なまり茨城弁で詞を書いている。お前も、格好つけずに自分の栃木弁で作曲しろ』とね。メロディーだって自分の言葉で書かなければ表現できないと教わった。それ以来、私はずっと栃木弁で作曲している」

 戦死した長兄・福田健一さんの吹くハーモニカで音楽に目覚め、栃木県の旧制今市中学(現今市高校)時代から、ギターを弾いた。戦後は進駐軍相手にジャズを演奏。上京し東洋音楽学校(現東京音楽大)ではクラシックの作曲を学ぶが、貧しさゆえの「流し」の経験もある。学生時代に知遇を得た作詞家の高野さんとコンビを組み、1955年に「別れの一本杉」が大ヒット。だが、高野さんは翌56年9月に亡くなる。

 「高野が逝った後は、私にとって残りの人生。『高野はどう言うかな』と考えながら曲を作る」とまで言う。

 だが、この若きヒットメーカーを世の中は放っておかなかった。村田英雄さんの「王将」は、現在まで累計300万枚という大ヒットを記録。美空ひばりさん、島倉千代子さん、大月みやこさん、ちあきなおみさん、北島三郎さん、鳥羽一郎さんといった名歌手たちの代表作を一手に引き受けることとなった。

 歌謡史の高みに上った船村さんだったが、健一さんの戦死と高野さんの早世を経て、どこか仏教的な「ポスト健一」「ポスト高野」の人生を生きていた側面がある。それが、ギターを抱えてどんな小さな会場へも向かう「演歌巡礼」、「行っていない施設はない」と言うほどの刑務所慰問、そして日の目を見なかった楽曲を“弔う”催し「歌供養」と、「哀れなもの」への慈悲深い視線に結び付いた。「日本語もかわいそうなことになっていますね」と船村さんはよく語っていた。歌作りにも、この「哀れへのまなざし」が大きく影響したのは間違いない。

 旭日中綬章、文化勲章を受章し、栃木県日光市には「船村徹記念館」も完成、と充実した晩年を過ごしたが、現役から退くことはなかった。それは「兄健一」「親友高野」そして「曲の根源・日本語」の供養を続けることを自らに課さざるを得なかった大作曲家の責任感であり、矜持(きょうじ)だったと言える。【川崎浩】


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