「引きこもり」するオトナたち
現役エリートの足元にも忍び寄る?
「非モテ」が行き着く“奈落の底”
2010年7月29日
その「引きこもり」当事者に初めて出会ったのは、01年頃のことだ。東京都内に住む、30代のサイトウさん。長年の引きこもり生活を経て、自助グループなどに顔を出すようになっていた。
「履歴を聞かれるのが恥ずかしくて、人と出会うチャンスを狭めていたんです。でも、インターネットで知り合った人との会話がきっかけで、崖から突き落とされるような感じで、再び社会に出るようになりました」
再就職したくても展望なし
貧困は途上国だけの話ではない
ネットには当時、社会との出会いのきっかけの可能性が広がっているのではないかと信じていた。しかし、10年経って、まもなく40代の半ばに差しかかろうとしているのに、サイトウさんは、経済的に自立した生活ができずにいる。
「今は、仕事をしたくて仕方がない。どうやって仕事をしていこうか。ハローワークにも何度も足を運びました。でも、長期展望が立たないんです」
すっかり年老いて、病弱になった両親と同居する毎日。人間関係の接点を求めて、社会には積極的に出ていくため、厳密にいえば、今は「引きこもり」ではないのかもしれない。しかし、サイトウさんは「引きこもっている人たちが、親の年金で生活しているのと同じ状況」だと自らを説明。「絶望的になりそうになるのを我慢している」という。
最近、あるテレビ番組を見て、ショックを受けた。ホームレス生活を続けていた自分と同世代の40代男性が、再就職のために手を尽くしている最中のこと。突然、映像が救急病院に切り替わった。なんと、男性は急死したのだ。
仏壇の写真は、20歳の頃の精悍な顔つきのまま笑っていた。しかし、棺桶の中には、40代のむくんだ男性が眠っている。両親によると、本人がずっと実家に戻らなかったため、20年前の写真しかなかったそうだ。サイトウさんには、現実の自分の姿とオーバーラップしているように思えたという。
「貧困って、昔の戦後の日本や、アフリカなど発展途上国の話だと思っていました。でも、現実に今、日本で起こっていることなのだと実感したんです。これまで何年もかけて、僕は何をやってきたのか、と思うんですね」
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「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。
■著者紹介
池上正樹 [ジャーナリスト]
1962年生まれ。大学卒業後、大手通信社や制作会社の勤務を経て、フリーに。月刊誌や週刊誌、夕刊紙で、ひきこもり現象や健康医療、マンションなど、医・食・住のテーマを主に手がける。著書は、『ハッピー リタイア マニュアル』(ゴマブックス)、『痴漢「冤罪裁判」』(小学館文庫)、『「引きこもり」生還記』(小学館文庫)など。
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